クラウドリアルティ代表者インタビュー(1)
- 2017/02/11
- 05:00
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クラウドリアルティ

左:代表取締役CEO 鬼頭 武嗣氏
右:オペレーション部兼総務部 柳原 千夏氏
■インタビュー日時
2017年1月27日
■インタビュー内容
―鬼頭代表の経歴についてうかがいたい
もともと家業が不動産業を営んでいた影響で、東大で建築・設計を学んだ。 当時(2001年ころ)は、ちょうど不動産の証券化が盛り上がっていたころだった。
大学院では長期インターンとして1年半ほど不動産ファンド等で働く機会があった。ドイツ証券でノンリコースローンなどの不動産のデットファイナンスを手掛け、グローブ・インターナショナル・パートナーズという米系のファンドでも働いた。グローブではファンド本体だけでなく、リサ・パートナーズとのJVの隼人インベストメンツやその他の傘下のプラットフォームを通じて、国内の不動産のアクイジション実務に携わっていた。
不動産のハードだけではなくソフトの部分もしっかり扱えるようになるべきとの考えで、事業の戦略立案やバリューアップの経験を積むため卒業後はボストンコンサルティンググループに入社し、3年半ほどそこでコンサルタントを務めた。
その後メリルリンチの投資銀行部で4年半、2014年11月まで勤務した。
不動産バンカーとして、J-REITや三井不動産などのディベロッパーのIPOや公募増資、現物不動産の証券化などを手掛けた。
―サービス開始の経緯は
準備を始めたのは2014年の年初から。
いずれは自分で不動産ファンドのビジネスをやりたいと考えていた。ただ、単にファンドで数字を追いかけるマネーゲーム的な関わり方だけでは面白くないので、もう少し自分でも中身に触れられるような、街づくりなど広い意味での投資を手掛けたいと思った。
メリルリンチ在籍時に携わっていたJ-REITは、今の市場環境でも平均して4%程度の分配利回りを達成しつつ、透明性も流動性も高い非常に良い仕組みだと思っていた。ただJ-REITでは開発やリノベーションといったものはできないし、また地方物件や規模の小さい物件は彼らの投資基準から外れる事も多い。また、ポートフォリオでの運用を行うため、既存の投資口の希薄化を避ける必要があり、増資をして新たな物件を取得する場合不動産と金融双方の市場環境が整うのを待つ必要があるという難しさもあり、この仕組みだけでは不動産市場の資金調達ニーズ全てに応える事はできないもどかしさも感じていた。
特に今後日本は人口が減っていくという大きな環境変化の中にいるので、ファイナンスのインフラもそれに合わせたものを創っていかなければならないと考えていた。
また、国際的な観点でもJ-REITには一つ問題がある。
欧州ではリーマンショック後にファンド規制が強化されたが、J-REITは欧州の監督当局との連携を怠った結果、その規制の対象となってしまい、日本の発行体が欧州で資金調達する際の足かせができてしまった。このような状況を見てきて、クロスボーダーでももっと簡単かつ低コストで資金調達できる仕組みを作らないとならないと考えた。
そういった中、エクイティ型クラウドファンディングは世界的にもまだルールが定まっていないので、チャンスがあると感じた。
このような背景と目的意識があり、公募REITの仕組みをベースとしているため、クラウドリアルティは、貸付型よりもエクイティ型、間接金融ではなく直接金融型のクラウドファンディングを目指している。(スキームの中に貸付を一部含んでいるが、全体で見たときにエクイティ性のリスクリターンとなるよう設計しており、案件の特性に合わせて商品を個別にカスタマイズしている。)
―他のソーシャルレンディングと比べてクラウドリアルティの特色は
ソーシャルレンディングとはスキームが異なる。不動産事業者に対する担保付きのローンではなく、あくまで不動産ビジネスの証券化である。J-REITのほうがイメージに近いと思う。
―第一号はエストニアのファンドだったが、なぜエストニアを選んだのか
エストニアは法律、税制上スキームが組みやすい環境だった。ITインフラもしっかりしている。
また、提携先となる現地のクラウドファンディングのプレイヤーも多い。
―第一号ファンドの出資先はどういった企業か
第一号ファンドは、エストニアの首都タリンと第2の都市のタルトゥの不動産開発に関わるブリッジファイナンスを証券化したもの。
貸付というよりも債権の証券化であり、投資対象は住居である。
―第一号の出資先は複数か
投資対象は2社以上。行政からのリクエストで複数化した。
―貸付先企業および担保不動産の詳細は公開しないのか
日本からの子会社貸付の先でも貸付として投資を行う形をとっているので、行政からのリクエストにより最終貸付先の情報は公開していない。
ただし、担保物件については開示する予定。
―海外案件は為替リスクがあるとのことだが、為替ヘッジは行わないのか
為替ヘッジは、第1号案件ではしていない。
将来的にはニーズがあればヘッジも考えている。
また、ユーロで入金してもらい、ユーロで分配するという形も考えている。
―今後予定されている国内向けファンドはどういった内容となるのか
今準備しているのはリノべると提携して実施する中古マンションのリノベーション案件である。ファンドが中古マンションを在庫として抱えて証券化する。
投資家からみると、出資したファンドが不動産を取得し、リノベーションを行い、売却するというスキーム。
売買益や時期によってリターンが変わってくる。例えば、順調にいけば投資期間半年でIRR20%といったリターンもあり得る。
―会社情報のページを見たところ、貸金業免許についての記載がなかったが、免許は取得しているのか
ビジネスモデルが貸金業ではないので免許は取得していない。
クラウドリアルティは、TATERUFUNDINGが手掛ける不動産特定共同事業のスキームとも異なる。現行の不動産特定共同事業はいろいろと制約も多いので、インターネットを活用して募集する我々のモデルとも相性がよくない。
現在の不動産の証券化手法は他にもいくつか枠組みがある。
J-REITは、投信法に基づいた証券化手法で、投資法人というビークルを用いてやっており、投資法人自身が内閣総理大臣の登録を受けると同時に、投資法人が保有する不動産を運用する資産運用会社も宅建業免許と取引一任代理認可が必要。
また、資産流動化法に基づいて特定目的会社で不動産を証券化する方法もあるし、会社法と商法に基づいて合同会社(以前は有限会社)と匿名組合出資を組み合わせたスキームもある。
―現在の社員数は
6名。あと2名ほど近々入社予定。
私以外の役割としては、オペレーション担当と、コンプライアンス担当、内部監査を担当している弁護士、エンジニア、システムを含めたミドル・バック業務全体を見るCOOがいる。
―出資案件はどのように募集しているのか
現在は建築や不動産業界の個人的なつながりや、銀行からの紹介。
クラウドリアルティ自身が出資を受けているベンチャーキャピタルや、金融機関からの紹介もある。
―出資の審査はどのように行っているのか。また、その体制は。
全体像としては、前職でやっていたような米系投資銀行の厳しい審査基準をベースにして、なるべく低コストかつ効率的に実施するようにしている。
審査には複数の段階がある。
まずスキーム自体を審査する。
例えば日本でお金を集めてエストニアの不動産に投資するというスキーム自体が両国の法律上問題ないのか、といった点を確認する。
このスキームの審査では行政とも密に連携し、最適解を探すようにしている。
また、提携先についても、コンプライアンス・ビジネス上の問題がないかを会社の情報や事業計画などを見て審査すると同時に、彼ら自身の審査体制や方法に問題がないかもチェックしている。
国内案件でも同様にスキーム上発生し得るリスクを一つ一つ精査している。
また、投資の裏付資産となる不動産も一つ一つ丁寧に見ている。
建物に瑕疵がないか否かを書面だけでなくインスペクションを行って確認し、他者の権利侵害の有無など遵法性に問題がないか、区分マンションの場合は、修繕積立金などがちゃんとあるかといった財務的な点も確認する。
もともと私はJ-REITのファイナンスの際にそうした審査も手掛けていたので、できる限り同じ基準に沿ってやるよう努力している。
ただ、扱っている物件の規模が違うので、コストをなるべくおさえるようにはしている。
プロセスとしては、不動産投資銀行部の責任者である私が審査をまず行い、社内の投資委員会にかける。
委員会には、コンプライアンス担当、内部監査担当に加え、オブザーバーとしてベンチャーキャピタル担当者が参加する事もある。
(次回に続く)




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