(書籍紹介)「入門クラウドファンディング」
- 2014/04/26
- 05:00
「入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達法」
山本純子 著
日本実業出版社
![]() | 入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達法 (2014/02/22) 山本 純子 商品詳細を見る |
著者の山本氏は、30代半ばまでオンラインゲーム会社でマーケティングを担当しており、現在はフリーでアーティスト・芸術団体に関する研究をされている方です。
資金調達とは特に接点はなかったそうですが、2011年頃からキャンプファイヤーなどのクラウドファンディングを通じてインディーズミュージシャンや映画監督、アーティストが資金を調達することに興味を持ち、研究を始めたとのこと。
そのため、この本では、クラウドファンディングの中でもキャンプファイヤー、キックスターターをはじめとする「寄付型」「購入型」について重点的にページが割かれており、maneoやAQUSHのような「融資型」「投資型」についてはほとんど触れられていません。
また、サブタイトルに「スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達法」とあるように、主に資金を集めたい人に向けた考え方・ノウハウ・アドバイスが中心となっています。
ただ、第6章「クラウドファンディングを利用するリスクとマネジメント」に、「資金提供者から見たクラウドファンディングのリスク」についての記載があります。
この部分については、ソーシャルレンディング投資家としても知っておいて損はないと思います。
著者は、「資金提供者から見たクラウドファンディングのリスク」として、
「詐欺」
「プロジェクトの失敗」
の2つを挙げています。
12年にキックスターターで調達を行おうとしたあるロールプレイングゲーム開発プロジェクトにおいて、一部の資金提供者が内容に疑問を持ち、独自に調査を行い、キックスターターに報告を行いました。
キックスターターは速やかにキャンペーンを中止し、資金は提供者の元に戻りました。
ただ、全体として、購入型クラウドファンディングで詐欺が行われ、成功した事例はほとんどないそうです。
また、詐欺の意図がなくても、資金を集めたが、技術不足・環境要因・資金不足などによりプロジェクトが失敗・中断し、結果として資金提供者に約束したリワード(報酬である商品やサービス)が提供されないという事態もありえます。
現在のところ、多くのクラウドファンディング・プラットフォームは、「キャンペーン内容がガイドラインを満たしているか」については審査しますが、その実現可能性までは審査の対象とはしていません。
実際、2000万円以上を集めながら、資金が途中で足りなくなり、開発が中断してしまったIT機器の例が挙げられています。
こうしたトラブルに対し、プラットフォーム側でも、資金調達者にリスク・チャレンジおよびそれに対処する能力についての説明の記載を義務付ける・試作品が出来上がっていないと審査の対象としない、といった対応を行うようになっています。
こうしたリスクに対して資金提供者側でできる対策として、
「関心を持ったプロジェクトに関しては、キャンペーン・ページに書かれていることをきちんと読む」
「疑問に思ったこと、聞きたいことに関しては、直接資金調達者に質問する」
の2つが挙げられています。
つい面倒でさぼってしまいがちですが、こうした心構えはソーシャルレンディング投資においても必要なものと思います。
興味をもたれた方は是非ご一読ください。