ソーシャルレンディング3社の徹底比較(2013年版)(貸し手編)
- 2013/05/25
- 13:44
今回は「貸し手から見た各社の比較」です。
なお、前回も書きましたが、各社の不動産担保ローンについては今回別の表としてまとめたので、以下には含まれていません。
AQUSHについては通常のAQUSHローン・SBIについては証券担保ローンについてのみ記載しています。
maneo(マネオ) | AQUSH(アクシュ) | SBIソーシャルレンディング | ||
ビジネス向けローン | AQUSHローン | 証券担保ローンファンド | ||
貸し手関連 | 金利(貸し手側) | 4.0%~10.0% (案件により異なる。) | ・金利は貸し手が選択できる。 (下限4%~上限15%) ・平均運用利回り実績 (グレードごと) AA: 5.1% A: 5.5% B: 6.2% C: 7.8% D: 8.4% (手数料引き後)(「AQUSH 2012データ・レポート」より算出) | 一律2.0% (手数料引き後) |
投資可能額 | 1万円~ | 5万円~2000万円 | 1万円~ | |
(ローンによっては最低投資額がもっと大きいものもある) | ||||
手数料(貸し手側) | なし | 貸し手から毎月貸出残高に応じた手数料を徴収(年利1.5%相当額) | 貸し手から毎月利息額×1.5%の手数料を徴収 | |
投資してから実際に融資が実行されるまでの期間 | 最大1カ月 | 低い金利を提示すれば早く融資が実行されるが、高い金利を提示すると融資が実行されないこともある。) | 原則2週間 | |
(借り手の希望金額総額が貸し手の投資金額よりも少ない場合はさらにかかる) | ||||
出資金の保全 | maneoエスクロー社による分別管理 | 分別された口座にてエクスチェンジコーポレーションの資産とは区別して管理 | 匿名組合員出資金は、会社の固有財産を保管する銀行預金口座とは別の銀行預金口座に預金し分別管理する。 |
■昨年度から変わった点について
SBIが「フリーローン・借換ローン」をサービス中止し、代わりに「証券担保ローン」を開始しました。
maneo・AQUSHについてはあまり大きな変化はありません。
■金利について
まずは貸し手にとって一番気になる「金利」から比較してみます。
(以下の数字はいずれも手数料引き後の金利です。)
maneoの金利は案件により異なりますが、大体4~10%の範囲で設定されます。
担保や返済実績のある借り手の場合は安全性が高い分、金利は低めとなります。
最近は5~7%程度の案件が多いです。
AQUSHでは、金利は4~15%の範囲で貸し手が選ぶことができます。
ただし前回の記事でも書きましたが、低い金利の貸し手から優先的に貸し出されるので、あまり高い金利を設定すると貸出が実行されません。
実質的には資金の需給バランスで決定されるといえるでしょう。
2012年の平均利回り実績は、一番信用度の高いグレードAAで5.1%、一番低いDで8.4%でした。
SBIでは金利は一律2.0%です。
証券担保があり安全性が高い代わりに金利は低めです。
まとめると、maneoとAQUSHの金利はちょうど同じくらいの水準で、SBIがやや低めです。
高金利を狙いたいならmaneoかAQUSHがよいでしょう。
■投資可能額について
投資可能額については、各社とも「ソーシャル」投資を標榜するだけあり、少額を設定しています。
一番高いAQUSHでも5万円です。
株や投資信託などよりもハードルは低く、お小遣い程度からでも始めることができます。
毎月少額ずつ積み立てていくような投資の仕方もできるでしょう。
■手数料(貸し手側)について
AQUSHとSBIは毎月貸し手からの手数料を徴収しています。maneoは貸し手からの手数料はありません。
ただし、表中および上記に記載した金利はこの手数料引き後の数値なので、比較に際してはあまり関係ないかもしれません。
■投資してから実際に融資が実行されるまでの期間について
見落としがちな要素ですが、ソーシャルレンディングでは投資したいと思ってもすぐに貸出が実行されるとは限りません。
借り手が少なかったりするとなかなか貸出が実行されない場合もあります。
その場合、せっかく用意しした資金が遊んでしまい、投資の効率が悪くなることとなります。
maneoでは、借り手を直接指定して投資する仕組みなので、投資できれば基本的には1カ月以内に貸出が実行されます。
ただし、常に案件が募集されているとは限らず、募集案件のない日もあります。
また、時期によっては募集が開始されてもすぐに満額で成立してしまい、なかなか投資できないこともあります。
「投資したいと思ってもすぐに貸出できるとは限らない」という点ではmaneoも同様といえます。
AQUSHでは、先ほども書きましたが、あまり高い金利を設定すると貸出がなかなか実行されません。
例えば一番信用度の高いグレードAAの貸出金利平均は5%程度なので、少し高めの8%くらいの貸出金利を設定すると、毎月希望貸出額のうち1割程度しか貸し出されないかもしれません。希望額の全額が貸し出されるには数カ月かかることになるでしょう。
もちろん欲張って15%の貸出金利を設定することもできますが、おそらく永久に貸し出されないでしょう。
SBIでは、2週間ごとにファンドを組成しているので、投資すれば原則として2週間以内には貸出が行われます。
ただし、貸し手の投資金額が借り手の希望金額総額を上回った場合は、余った資金は次回に持ち越されるため、さらに時間がかかることもあります。
(貸出比率は90%以上なので、実際にはあまりそういう事態は起こっていないようです。)
maneo・AQUSHでは、「金利」と「貸出までの期間」は、トレードオフの関係にあるといえます。
低い金利で早く貸し出すか、あくまで高い金利を狙ってじっくりと構えるか、いずれかの作戦を選ぶ必要があります。
■出資金の保全について
あまり考えたくないことですが、万一ソーシャルレンディング事業者が破綻した場合、投資家の資金はどのように守られているかは重要な要素です。
3社とも、投資家の資金は別の口座にて分別管理しているとのことです。
ただし、これは必ずしも事業者の破綻時に資金が全額保全されることを意味するものではありません。
例えば、maneoの投資時の契約書には以下の記載があります。
<以下引用>
匿名組合契約締結にあたってのリスクについて
・ お客様のmaneo社に対する出資金は、出資された段階でman
eo社の資産となります。
したがって、maneo社の信用状況が悪化した場合には、お客様
に対して出資金全額を返還することができないこととなり、結果と
して、お客様に出資金元本額が欠損する損失が発生する場合があり
ます。
・ maneoエスクロー株式会社(以下「maneoエスクロー社」
といいます。)は、お客様から、maneo社に対する出資金の預
託を受け、またmaneo社からお客様への出資金返還金及び配当
利益の預託を受け入れることとなりますので、maneoエスクロ
ー社について倒産手続が開始された際、お客様からの預かり金が倒
産財団に組み込まれる法的リスクがあります。
この場合には、お客様に対して出資金全額の返還をすることができ
ないこととなる結果、お客様の出資金に欠損が生じる可能性があり
ます。
<引用終わり>
AQUSH・SBIの契約書にも同じような内容の記載があります。
分別管理されているとはいえ、基本的には事業者が破綻したり信用状況が悪化したりしたときには資産は欠損するかすべて失われるものと思った方がよいでしょう。