今回は、サイト開設2周年企画第2弾です。
前回の
エクスチェンジコーポレーション(AQUSH)ラッセル・カマー社長への特別インタビューに続き、maneo株式会社妹尾社長にインタビューを行いました。
妹尾社長の大変なご厚意により実現しました。
妹尾社長にはこの場を借りて改めてお礼を申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
なお、インタビューはmaneo株式会社のオフィスにて行いました(実施日:2013年2月6日(水))
<審査について>けにごろう:
これまで法人向け貸付については1件もデフォルトが出ていない。
審査の方法を個人向けと法人向けとではどのように変えているのか。
妹尾:
個人向けは半ばオートマティックにスコアリングをして審査していたが、法人向けは1つ1つ手作業で審査を行っている。
まず法人については、すでに取引のある会社などからの紹介案件が基本となっている。
紹介案件を優先しているのは、「実は会社実態が存在しなかった」という事態を避けるためである。
そのあたりは書類だけではなかなかわからない部分もある。
審査のプロセスはほぼ銀行と同様で、まず財務諸表のチェックを行う。
次に、会社を訪問し、社長と面談して経営についての考え方や資金使途の確認を行う。
また、会社のお金と個人のお金がちゃんと分離されているか・不透明なお金の流れがないかなどを、銀行通帳などを確認してチェックする。
問題なければ、どういうスキームで貸出を行うか考える。
不動産・在庫・売掛債権などを担保にできないか、売り上げの入金口座を当社で管理できないかなどを検討する。
また、他の貸出先やグループ企業とシナジーを働かせることができないかについても考える。
1つ1つの案件をオーダーメイドで作っているのが実態である。
けにごろう:
審査の体制はどうなっているのか。
妹尾社長1人でやっているのか。
妹尾:
最初の段階ではまず私が審査する。私が携わらない案件というのはない。
ただ、次に社外取締役による融資委員会でのチェックを必ず行う。
審査には最低でも1か月・長いものだと6か月以上かかる。
そのため、緊急性を要するような案件は現在は取り上げていない。
審査に一番体力がかかる。
けにごろう:
審査の体制を強化することについては考えているのか。
妹尾:
現在借入の営業は特にしていないが、引き合いがたくさんあり、審査が追いつかない状態。
確かに人材不足が成長のボトルネックになっている。
人を増やしたいとは考えており、人材募集もしているが、なかなかマッチする人がいない。
単純な審査だけではなく、スキームを考える柔軟性も必要。
また、お金を扱う商売なので、なるべく紹介してもらった人を採用できればと思っている。
経歴としては、銀行やノンバンクで事業性の借入を担当していた方でないと難しいのではないか。
貸出先の管理にも人手がかかるので、その意味でも人材はほしいと考えている。
けにごろう:
飲食店向けの融資案件もあるが、飲食店の開業前にそれがはやるかどうかを見極めるのは非常に難しいと思う。
どのように審査しているのか。
妹尾:
ウィンコーポレーションというフードプロバイダ事業を営む会社がグループ会社にある。
フードプロバイダ事業とは、飲食チェーン店の仕入・物流を一体で行う事業であり、そこから派生して売上入金管理も行っている。
そこが飲食店に関するノウハウを持っているので、事業の実現性などについてはコンサルタントを受けている。
実は飲食店案件については、ウィンコーポレーションを通じて持ち込まれるものが多い。
必要に応じて専門的なアドバイスを受けている。
けにごろう:
私が初めて投資した案件は新橋の居酒屋わっつりだった。
先週久しぶりに行ってみたが、とても繁盛していた。
妹尾:
あそこは大変繁盛している。
金曜日などに行くと入れないことも多い。
<案件について>けにごろう:
紹介案件が中心とのことだが、ウェブサイト上でも融資申し込みを受け付けている。
そちらからの申込案件はないのか。
妹尾:
融資先の間口を広げるために受け付けているが、これまでは審査に通った案件はほぼなかった。
カンボジアのカフェ開業案件はウェブからの申込だったが、それくらい。
けにごろう:
カンボジア・モンゴルなど海外の案件もあるが、為替リスクはどうなっているのか。
妹尾:
為替リスクは、貸し手ではなく借り手が負っている。
為替変動があれば、現地通貨建てでの返済額が増えることもありうる。
カンボジア・モンゴルなどの現地通貨だと為替変動が大きいが、カンボジア・モンゴル共にドルが流通しており、ドル建てでやっているのでややリスクは軽減されている。
借り手にとっては、現地で資金調達するよりも、為替リスクを負ってでも円で調達したほうがはるかに有利。
例えばカンボジアでは不動産担保がないと融資が受けられない。
また金利も15%~20%と高い。
けにごろう:
最近は案件が募集開始されてもすぐに満額になってしまうことが多い。
妹尾:
投資家の皆さんには大変申し訳ないと思っている。
最近毎日のように投資家の皆さんから催促をいただく。
水面下で準備している案件はいくつかあるが、まだ出せない状態。
かといって拙速にやるつもりはない。
やはりデフォルトは絶対に出したくないので、安全性優先でやりたい。
1月は期限前返済もあり、特に返済額が多かった。
そのために現在資金がやや余っている状態。
また投資家数・投資額も日々増えている。
一方で案件は急には増やせないため、一時的に案件不足になっている。
少しずつ解消していきたい。
けにごろう:
貸出の仕組み自体を見直す予定はあるのか。
例えば金利をオークション形式にする・一人当たりの融資金額に上限を設けるなど。
妹尾:
今のところ大きく変える予定はない。
ときどきそういった要望もあるが、あくまで案件不足は一時的な現象ととらえている。
仕組みを変えてしまうと、あとで問題となる可能性がある。
<期限前返済について>けにごろう:
成立から2カ月程度で期限前返済となってしまったり、モンゴル軽油案件のように一斉に期限前返済となった案件があった。
早期返済について投資家としては理由が知りたいと思うが、理由を開示する予定はないのか。
妹尾:
投資家の信頼を得るために、基本的には情報はオープンにしたいと考えている。
期限前返済についてもオープンにしたいとは思うが、借り手の事情として開示できない場合もあるので、一律公開するというわけにもいかず、その線引きが難しい。
そのため、現状では一律非公開としている。
公開できない理由としては、例えば銀行からの融資を受けるにあたってノンバンクであるmaneoからの借入があると問題となるケースなどがある。
また、不動産関連の案件では、そもそも借入期間を長めに設定していることもある。
不動産が売れれば返済できるが、安全のためにやや長めに設定している。
案件募集の中止については理由を明らかにしている。
「あらしのよるに」のアニメ制作案件では、資金を集めた後に中止となってしまった。
法律的には問題なかったが、maneoでの資金募集について原作者からストップがかかったためだった。
けにごろう:
期限前返済について、手数料などのペナルティを設けることは考えていないか。
妹尾:
現状では考えていない。
借り手にとってはそうした制約がないほうが利用しやすく、制約を設けると敬遠されてしまう可能性もある。
<今後の新サービスについて>けにごろう:
現在は法人向け貸し出しに特化しているが、新たなサービスの予定はあるか。
妹尾:
審査体制が法人向けにシフトしており、個人向け貸し出しを再開する予定は今のところない。
法人向け融資にはまだまだニーズがあると思っている。
また、法人同士を組み合わせることで新たなビジネスを作っていくこともできる。
ただ、ソーシャルレンディング以外では、映像などのコンテンツに対する資金募集などのクラウドファンディング事業にも将来的には興味がある。
おそらく投資家の層はまったく異なるはず。
インセンティブが金利なのか、何らかの特典なのか、という違いがあるが、資金を集めるプラットフォームは同じなので、親和性はあると思う。
けにごろう:
クラウドファンディングは事業としては利益の得られるものなのか。
少なくとも投資家は金銭的利益目的ではないはずだが。
妹尾:
運営企業は手数料として募集額の20%程度とっていると聞く。
maneoは元本に対して7%程度の収益なので、クラウドファンディングの収益性は高いのではないかと考えている。
クラウドファンディングはコンテンツが勝負。
おもしろいコンテンツ・プロジェクトを集め、投資家の興味・関心を惹くことができれば、収益性の高い事業になるのではないか。
<情報公開について>けにごろう:
maneoは他の事業者に先駆けて決算書を昨年公開したが、このタイミングで公開したのはなぜか。
妹尾:
なるべく早く出したいとは思っていたが、それまでの決算書はあまり意味のある内容ではなかった。
意味のある内容になってきたのが昨年だったので、そのタイミングで公開した。
けにごろう:
今後さらに情報公開を進める予定は。
妹尾:
出せるものと出せないものはあるが、なるべく投資家の期待にこたえたいとは思っている。
貸出先の決算書・事業計画については、公開しても問題ないものは公開している。
ただ、逆に公開することで投資家を混乱させてしまうようなケースもある。
そうした場合はあえて出さないこともある。
<maneoシステムについて>けにごろう:
maneoシステムのような複雑で規模の大きなシステムを構築・運営するというのはなかなか大変だったと思う。
妹尾:
システムを作るときは10人程度のエンジニアで作った。
現在は1名で運営している。
特に大規模なトラブルもなく運営できている。
最近は特に案件リリース直後に投資家のアクセスが集中し、システムの負荷が高まり、アクセスしにくい状態となってしまうことがある。
この点については改善を進めている。
maneoでは決済システムは持っておらず、銀行のシステムを利用しているため、その部分の難しさはなかった。
ただ、重要な顧客の口座データを扱っているため、クラウドではなく自前のサーバを使用している。
大規模災害に備えシステムバックアップも行っている。
お金を扱うビジネスとして、データが消えるなどのシステムトラブルは絶対に避けたい事態。
システムには今後も十分な投資を行う。
<ソーシャルレンディング業界について>けにごろう:
ソーシャルレンディングというサービスは、欧米ではすでにZOPA,lending clubなどの大きなサービス会社があり、金融市場の中である程度の存在感を示している。
それに対し、日本では、規模は拡大しているとはいえ、市場全体の中における割合・認知度はまだ低いと感じている。
それについてはどう考えているか。
妹尾:
現状認識については同感で、知名度や潜在的なマーケットの中での割合はまだまだ低いと感じている。
これまでmaneoでは70億円程度の貸出を行ったが、マーケット全体からみれば何百分の一程度の割合に過ぎない。
逆に言えば伸び代は大きいということ。
ソーシャルレンディングがブームとならない原因としてはいくつか考えられる。
まず参入企業数が少ない。
参入するうえでの障害として、システムを作るのが大変ということがある。
SBIソーシャルレンディングが参入した時に、もう少し知名度が向上するかと思ったが、そうでもなかった。
また、3社とも広告宣伝をほとんど行っていないことも要因。
広告宣伝するだけの体力があるところがない。
ネット生保などは既存の大企業がスポンサーとして入っていることが多く、知名度も広告宣伝する資金力もあった。
ソーシャルレンディング3社はいずれもベンチャー企業で、資金力で不利な面はあった。
知名度・信用度を上げる手段として、例えばIPO・株式公開が考えられる。
ゴールではないが、手段としてはあり得る。
3社のうちのどこかが公開できればよいと思う。
われわれとしても頑張っていきたい。
アメリカでは1社で1000億円程度の貸出を行っているところもある。
日本では、一気にその規模に行くのは難しいが、まずは100億・200億を目指したい。
100億を達成すれば、いくらか注目されるのではないか。
メディアに取り上げられることも多いが、伸びきらないのは、投資家にとって怖いという心理があるのではないか。
日本では投資詐欺などもあり、心理的なハードルが高い。
そうした不安を払拭するために少しでも情報公開を進めている。
投資家はあまり周囲の人に投資について話すことが少ないのではないか。
口コミ効果が働きにくいのかも知れない。
ブレイクしないというのはその通りだが、必ずしも急速に規模を拡大することが良いとも考えていない。
無理に数字を追及して投資家に損失を与えることがあってはならない。
貸し倒れという事態を少しでも減らすように努力し続ければ、いずれはブレイクスルーに達すると考えている。
現在、投資家数・投資額とも増えており、その兆しは見えていると感じている。
現在、当社の経営自体は安定しており、その面で投資家に迷惑をかけることはない。
本を出したのも、少しでも当社のサービスについて知ってほしいという気持ちから。
こうした地道な活動も重要だと感じている。
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