マリタイムバンク昼田代表にインタビューさせていただきました
- 2022/08/03
- 05:00
■インタビューさせていただいた方
日本マリタイムバンク株式会社 代表取締役 昼田 将司氏
日本マリタイムバンク株式会社 最高財務責任者 片坐 雅志氏
■インタビュー日
2022年7月15日
■内容
―昼田代表の経歴についてうかがいたい
私は2004年に船舶業界に入り、シンガポールで7年間、インドネシアで5年間業務に携わった。
シンガポールでは現地の船舶ブローカーの会社で外国人に交じって日本人一人で勤務していた。船舶ブローカーとして船の売買や傭船(レンタル)の仲介を手掛けていた。日本では船舶ブローカーはニッチな業種だがシンガポールは国策で海運業を推進しており、船舶ブローカーも数多く存在する。他にも船舶に関わる銀行・保険会社・弁護士などもたくさんいる。
その後ギリシャ資本の船舶ファンド会社のシンガポール支店に移った。ギリシャは船舶の世界では有名で、船舶のファイナンスやファンドの分野でも先進的である。そこで船舶ファンドの組成を3年ほど手掛けた。
2009年にリーマンショックの影響で海運マーケットも大きな影響を受け、ファンドの多くも失敗した経験を持つ。その後はファンドの資金回収作業を手掛ける中で、船の差押や、競売にも携わる経験を持つことができた。
その後、船をスクラップにする事業に注目し、船舶スクラップファンドを立ち上げた。
その結果スクラップ業界で名前が知られるようになり、「自分のスクラップヤード(船をスクラップにする設備)を持たないか」という提案を受けた。その提案を受けてインドネシアに移った。
船主から出資を受け、インドネシア初のスクラップヤードを建設・運営した。5年ほど手掛け、その後スクラップヤードを現地の造船所に事業売却した。
2016年に帰国し、MIP株式会社という会社を立ち上げた。
MIPは第2種金融商品取引業者で、船舶のオペレーション・リースを手掛ける会社。認可を得るのに時間がかかり、事業開始は2018年からとなった。
MIPでは4年間で250億円近くの資金を集め、現在船を50隻ほど保有している。
なお、方坐は元々新生銀行で船舶を担当していたが、MIPに入社した。
そして2020年2月に日本マリタイムバンクを設立し、関東財務局に第2種金融商品取引業者の申請を行った。実際事業が開始できたのが2022年3月。船舶クラウドファンディングは日本で初めてということもあり、大変審査が厳しかったが、MIPでの実績が評価された。ただ、タイミングが悪くSBIソーシャルレンディングの不祥事が重なり、そのために審査が遅れた。
―マリタイムバンクのサービスを開始した理由は
我々はもともと海運のプロである。
船舶業界では大きな資金が必要となることが多い。そこに資金を提供する船舶ファイナンスはおいしいビジネスだが、日本では手掛ける金融機関が非常に少ない。一部の地銀が手掛けているが、日本人にしか貸さない・その地域の会社にしか貸さないなど、独自のルールがあり、海外の船会社にとっては使い勝手が悪い。
現在世界的に船舶の数はどんどん増えている一方で、ヨーロッパの銀行は自己資本比率規制などの影響で船舶ファイナンスの残高を減らしている。その関係から船舶の世界では資金の受給バランスが崩れて(資金需要大、資金供給小)大きなビジネスチャンスが生まれているが、先に述べたように日本の金融機関はこの穴を埋められる存在ではなく、このビジネスチャンスの事業化をできているのがアメリカのプライベートエクイティであったりヨーロッパでは年金ファンドである。
そこで日本でもこのビジネスをクラウドファンディングの形で実現するアイデアを思い付いた。
投資家が10%の利回りを要望するから、10%の投資案件を作ると言うよりも、我々がいいと思う案件を出したい。利回りに関しては、船の業界は基本的に米ドル建てで、ドルは最近金利が上がっており、今年中には3%になると言われる。 そうなれば日本の投資家へのリターンも上がっていくと予想している。
―日本マリタイムバンクは株式会社オーシャントラストの100%子会社だが、株式会社オーシャントラストの出資者は誰か
オーシャントラストの株主は、昼田とパートナーの2名。
―株式会社オーシャントラストの業務内容は
オーシャントラストは船舶のブローカーを手掛けてきた会社だが、投資家との間で利益相反が生じる可能性があるため、マリタイムバンクのサービスを開始した段階でオーシャントラストの事業は中止した。
今後ブローカー業務を手掛けるとしたら、マリタイムバンクで行う。
なお、不動産クラウドファンディングでは自社の所有する不動産を子会社に売却しているケースがあると思うが、それは利益相反にあたると考えている。子会社との取引では、いくらで売却するかは自由に操作できる。これはファンドマネージャーのモラルの問題ではないか。
我々は、自社の子会社向けの案件や、自社が保有する船に出資させるということはしない。
―日本マリタイムバンクの社員数は何名か
現在8名
それぞれ代表者・営業部・融資審査・経理・システム・内部監査・ファンド審査などを担当する。
―他のソーシャルレンディングと比べてマリタイムバンクの特色は
マリタイムバンクの特色は、船を担保に融資する点である。
例えばSBIソーシャルレンディングは太陽光事業を手掛ける企業に融資していたが、借り手企業に事業の実態がなかった。太陽光パネルを担保としていたようだが、太陽光パネルは動産なので、差し押さえ後に売却しても、その資金は他の債権者と山分けになる。
一方、船舶は抵当権を設定することができるので、それを売却した代金は他の債権者と分ける必要はない。
なお、当社では投資の段階で存在しない、これから造る船の案件は融資対象としない。あくまで現在借り手が保有している船を担保とする。
ちなみに海外のマイクロファイナンスに無担保で貸している同業他社もいるが、無担保なのでマイクロファイナンスの事業者の事業が上手くいかなければ資金回収は無理だと思う。
また、不特法の投資型不動産クラウドファンディングでは不動産担保を取っていない。
我々のサービスは、抵当権を設定できる船舶を担保としているので、安全性が高い。
―借り手はどのように探すのか
海外のブローカー経由で探す。
船舶会社と直接やり取りすることはしない。それをやると、船舶会社のために資金調達の仕事をすることになってしまう。
そうなると、返済の遅延などが起こった場合船会社と馴れ合ってしまい、投資家との間で利益相反が生じる可能性がある。
―借り手の審査はどのように行うのか。また、その体制は。
過去3期分の決算書、信用調査レポート、風評などに基づき審査を行う。
これらについては船会社はインチキのしようがない。
運賃や船価のストレスチェックも行う。景気の悪化などで運賃が低下した場合、どこまで会社の経営が耐えられるか、船価が低下した場合どこまで融資を回収できるかというチェック。
審査は融資審査担当者が1名で行う。
―船舶を担保とするとのことだが、船舶の資産価値はどのように見積もるのか
船舶の価値は、基本的に船型・船齢により決まる。
例えば5万トンの石炭が積載できる船型は、国際的にその規格が決まっている。船型・船齢が同じなら日本でも海外でも基本的に同じ値段になる。売買事例はすべて公開されている。
担保となる船舶については、イギリスのベッセルバリューという会社から船価鑑定書を取得している。
ただし、それは現在の価格であり将来的に変動する可能性もある。そのため、船の過去の価格データを参照し、将来の価格がどの範囲内に収まるかをシミュレーションする。
実在性の確認は、運航証書や図面、位置情報や写真などで行う。実際に船を見に行くことはない。
船舶は、車検のように5年に一度ドックで点検を行うことが義務付けられている。。
船が港に入った際に不備が見つかると出航できなくなる。船舶が船級協会に加入していれば、船の品質が一定の水準に達していると判断できる。そのレポートのチェックも行う。
―船舶は移動可能だが、返済遅延時にはどのように差し押さえを行うのか
担保となった船舶の船長から、現在位置などの情報を含む航海日誌を毎日受け取っている。
船は燃料や食料・水の定期的な補給が必要なので、いずれかの港に必ず入る。
港に入ったら、その国の裁判所に申し立てて船を差し押さえる。
ただ、まれに船が逃げるケースもある。
その場合は、船員に直接連絡する。
融資に遅延が出ているということは、船員への給料も支払われていないと考えられる。船員は、船の売却代金のうち、未払い給与を取る権利があるので、船員に「この港に行って欲しい」と伝えると、協力してくれる。
こうした対応は、それなりの経験が必要で、誰でもできるものではない。
昼田は以前船舶ファンドを運営しており、差し押さえや抵当権の実行は数多く経験している。日本の金融機関などはこうしたノウハウはまず持っていない。
―船舶を差し押さえたとして、どのように売却するのか
差し押さえをした国の法律にしたがい競売を行う。
きちんとした制度がある国でないとできないので、そういう国で差し押さえるようにする。
かかる時間は国によって異なるが、例えばシンガポールの場合は1ヶ月以内に終わる。
―マリタイムバンクの投資家にとってどういったリスクがあるのか
為替リスク、船会社の与信リスク、マリタイムバンク社自体の営業者リスク、海難事故リスクの4つがある。
―海難事故リスクに対してはどのように対応しているのか
船会社が保険に入っている。その保険金の質権設定をし、当社に最初に保険金が入ってくるようにしている。
―ファンドには全て為替リスクがあるのか
これまでに募集した案件は全て為替予約をしているので、基本的には為替リスクはない。
ただ、今後の案件については、ドル建てで出すものもあるかも知れない。その場合は為替リスクが生じる。
―投資家への分配はどのように行うのか
当社のファンドは、金利だけでなく元本も定期的に分配している。
担保である船の価値は時間が経つにつれて下がるので、それに合わせている。
―手数料はどの程度とっているのか
手数料は1%程度で、船会社に対しては金利5%程度で貸している。
―これまで募集されたファンドは利回り4%程度だったが、今後も同様の水準を予定しているのか
今後は米金利の上昇に伴い上がる可能性がある。
―投資家の資金の分別管理はどのように行っているのか
金融庁から求められているように、口座を分けて管理している。
―募集期間を過ぎると案件の内容が閲覧できないようになっているのはなぜか
船会社の個人情報保護のため。
借り手の会社名・決算書などの情報を無関係の人間に公開することは借り手にとって不利益となるため、募集時に投資家にのみ開示するようにしている。
―タンカー3号ファンドは、法人のみ投資可能とのことだったが、なぜ法人のみとしたのか
金額が4.8億円と多く、個人からだと集めにくいと判断したため。
すでに、海運会社などいくつかの法人投資家から集める見込みがあったため、そのような形にした。
現状だと、個人より法人のほうが投資金額が圧倒的に多い。
―今後はどういった案件を予定しているか
コンテナ船など、様々なファンドを予定している。
現在は船が好景気だが、今後はマーケットが悪化する可能性もあると考えているので案件組成には慎重になっている。
―募集金額の目標は
船舶は最低でも5億円ほどの規模になる。
まずは個人からも億単位の資金を調達できるようにしたい。
―株式会社マリタイムバンク自体の経営状況は
2020年に設立して以来、売り上げはまだないため、現状は赤字となっている。
ただ、増資はしているのでBS上は問題ない。
なお、オーシャントラストの財務状況は非常に良い。
―株式公開予定は
いずれはしたいと考えている。
―投資家にサービスをアピールしていただきたい
マリタイムバンクは、船舶という古い分野と、クラウドファンディングという新しい手法を組み合わせたサービスである。
投資家のサポートを受け、船会社の資金ニーズに応えていきたい。
我々は船舶に高い専門性を持つ金融業者であり、イノベーションが乏しい日本で、船の世界でイノベーションを起こしたい。
今後投資家と一緒に成長できればと考えている。



左 日本マリタイムバンク株式会社 最高財務責任者 片坐 雅志氏
右 日本マリタイムバンク株式会社 代表取締役 昼田 将司氏
次回は「ソーシャルレンディング事業者紹介および評価(2022年版)「FANTAS Funding」「CRE Funding」」の予定です。




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